『田園の詩』NO.15  「ケムたい話」 (1994.6.7)


 私の住む大分県・山香町、この小さな町でも年に何回かの「講演会」があります。
町や教育委員会などが主催して、中心地の小学校の体育館で(文化会館がまだ
ないので)あるのですが、テレビでよく拝見する講師の方のお話が聞けたりして、
田舎に引っ込んだ私たち夫婦にとって楽しみのひと時となります。

 先日、町の中心地から8キロ離れた当地区の集会所でも初めて講演会がありま
した。中央からの講師ではありませんでしたが、県内で幅広く活躍されている先生が、
農業や地域の活性化について示唆に富んだお話をされたので、私達には、たいへん
有意義な講演会でした。

 その反面、ビックリすることもありました。会が始まってしばらくして、あちこちで
タバコを吸い出したのです。若い人の出席は、もともと少なかったのですが、タバコ
を吸っていたのは指導的立場にある年配の人がほとんどでした。

 誰からも注意されることのない一番身近な集会所なので、何の遠慮もなく吸ったの
でしょうが、話を聞きながらの喫煙は講師に対して失礼だし、熱心に耳を傾けている
人の邪魔にもなります。

 田舎の人は、中央(都会)での会合などに出席した時は、「借りてきた猫」みたいに
おとなしいのに、身近な場所では、「親しき仲にも礼儀あり」という基本を無視して
傍若無人に振舞う傾向があるように思えます。

 ところで、当寺でも、沢山の人がお参りして仏教の話を聞く会を行なっています。
私は女房に「うちでも、お説教の時、タバコを吸っていたかなあ」と尋ねてみました。
そしたら、「吸う人はいないけど、寝てる人がいる」という答えが返ってきました。
喜ぶべきか悲しむべきか、私は複雑な気持ちになりました。


     
      願教寺の春彼岸会の様子。小さな本堂の中で、お説教使さんの話を熱心に
        聞いています。          (08.3.16 写)



 地域活性化が叫ばれる現在、大きな企業を誘致することも大切でしょうが、まずは
地域住民の意識改革こそ先に取り組むべき課題だと思います。田舎根性が残った
ままでは、いつまでたっても地域はイキイキしてこないと思います。
                            (住職・筆工)

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